『中国文学史』(佐藤一郎 慶應義塾大学出版会 1971年初版、2005年3版)読了

中国文学史

中国文学史

慶応大学通信教育の教科書みたいです、この本。
206ページほどの文学史です。清までで193ページもつかっているので
現代文学については簡単にしか触れられていません*1
しかし、アモイ大学の古代文学史の復習にはそのほうがかえっていいですね。
(復習にはあまりならなかったりしますが・・・。そもそも、アモイ大学の教科書も薄くて、お互いになにを中心にするかが違っているので、あまり重なってない感じがします。たぶん、この教科書を持込可で卒業試験を受けたとしても、合格できないでしょう)


序論にあった、中国文学の特質をこの場にメモっておきます。

・道の文学、人生のための文学という考え方が強いこと。
・詩と文章のための文学という意識が強いこと。したがって小説の発達は、その他のジャンルよりはるかに遅れた。ことに長編小説の発達では、『源氏物語』の成立を見てもわが国の方が数百年も早いのである。
・一般に政治性社会性が強く打ち出されていること
・その発想がほぼ歴史主義に立脚していること
・表現法における具象性。人間をその立振舞や外形から主として描写しようとし、心理分析に深入りしない。そしてこれは、現代文学にまで及んでいるのである。

この教科書、中国文学専攻の学生だけでなく、国文の学生が読むことも視野にいれているので、
国文学との関係もいろいろ書かれています。
たとえば、白居易が日本人に好まれた理由(123ページ):

1:解りやすいことが外国人である日本人に好まれたのであろう(白居易の流行には、やはり平易な作風をあげないわけにはいかない)
2:平安朝の宮廷人たちの、ひとつの理想が白居易の生涯(天子に見いだされて低い官職→昇進)
3:『白氏文集』が平安貴族たちにとって、一種の百科事典のような役割を果たしていた(偏りがなく、詩文のあらゆるジャンルと題材を取り上げている)
4:日本の詩歌と同じく『文集』には雪月花が多く主題となっている
5:白居易は平安貴族と同じく仏教信者であると共に風流人であり、もののあわれの精神の理解者である

現在の中国ではある作家についてどうとらえているのかということも(紙幅の関係で数行程度ですが)書かれていてとてもいいです。


それからほかには・・・。
加上説はしっていたのですが、盤古は六朝になってようやく中国神話のなかに登場*2し、そもそも南方系(ミャオ族)の神様だったんですね・・・。


もう1冊文学史の本(↓)をかったので、中国にもどってから読みます。

中国文学史

中国文学史

*1:慶応通信課程のサイトをみると「中国文学史」は2単位のようですから、ちょうどいいぐらいですね

*2:名前がでてくるのは、もっと古そうですが・・・