パブリック・ディプロマシー (公共外交)戦略:福島香織さんの記事

フジテレビ、韓流偏重抗議デモに思う
日中韓のパブリック・ディプロマシーの実力(日経ビジネス 2011年8月24日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110822/222185/?P=1

福島香織さん、北京ではいい記事をありがとうございました。
でも、この記事は、デモの本質をわかってない気がします。
(この記事はデモに引っ掛けて日本もパブリックディプロマシーを頑張れというのは十分わかりますが)
この動きは、この国メディアのあり方を問うているんだと思います。
自社が版権をもつコンテンツを、ニュース番組にすらだして宣伝する手法とか、
日本にかえってテレビをみると、うんざりします。
(「じゃ、みるな」と安易にいわないでくださいね。海外在住がながい日本語教師として、日本でどんなテレビが流れているかをしるのも仕事のひとつですから・・・)

パブリック・ディプロマシーというのは文字通り、外交機関ではなく、パブリックのメディアや民間の機関、産業などを駆使して、文化・情報発信、留学などの教育、観光などの市民交流を通じて、直接相手外国市民に接触し、自国のプラスイメージを植え付け、相手外国市民の考え方を自国に有利なように変え、その世論の力を借りて相手政府の外交政策を考えさせてゆく手法である。最近では「ソフトパワー外交」とも言われている。

中国が取ったパブリック・ディプロマシー戦略でそれなりの効果をあげたのは2004年から始まった中国語・中国文化学習機関としての「孔子学院」の海外進出だ。

それまで西側社会で中国語の語学学校を経営する人の多くは、1989年の天安門事件を契機に国外に出た元留学生などで基本的に反共産主義、反中国の立場で、語学教育とともに中国に対するマイナスイメージを教え込むとして、中国当局は問題視していた。そこで孔子学院を海外に開設し、外国人に語学とともに中国のプラスイメージを教えこむ。ソウル校を皮切りに2010年までに96カ国・地域で332校と分校扱いの教室が400前後できている。

これって、中国や中国語を知らない人には有効なやり方でしょうが、
孔子学院って中国語をおしえるところですからね。中国語がわかるようになれば、教科書以外の中国語にも触れる機会がふえますよね。
厚化粧をして魅力的にみせても、親しくなり一緒に生活するようになってノーメイクの姿をみるようになれば、気がついちゃうんですよ。
アメリカのパブリックディプロマシー戦略についていってますが、
中国よりアメリカはその実質においてもずっと魅力的ですからね。


それに、自国文化への自慢がおおくて、かえって碧々する人も多いんじゃないでしょうか。

外国のメディアや報道機関、外国人ジャーナリスト、文化人に特権を与えたりして親中的に育て上げ、対外的に中国のプラスイメージを発信してもらう、というのも、エドガー・スノーの例を引くまでもなく、中国当局の得意とするところである。

しかし、やはり、中国に興味を持たない普通の人に、中国のプラスイメージを刷り込むには、映画、ドラマ、アニメ、ポップスといった大衆娯楽の流行に勝るものはない。ただ、これは難しい。つまり、魅力あるコンテンツを作る実力が必要だからだ。

中国の某テレビ局関係者がこんなことを言っていた。

「韓国政府は中国における、韓国産コンテンツの契約外放送、違法コピーなど、すべて黙認してくれている。それは知的財産権侵害による経済損失以上に、中国で韓流ブームを起こすことのメリットがはるかに大きいと認めているからだ。中国人の対韓国人感情を好転させ、市場が韓国を選ぶように仕向ければ、テレビ用コンテンツだけでなく、韓国製品も売れるし、韓国企業の海外進出もスムーズにいき、最終的には対中外交もやりやすくなる」

たしかに、韓国のドラマはネットにもたくさん違法アップロードされてます。
日本のドラマやアニメは、アップロードされていても、時々消されていたりします。
(私も自分の先生の書いた本がそのままアップロードされていたので削除依頼しました)
で、あるサイトのドラマジャンル「日韓」では、ほとんどが韓国ドラマになってしまっています。韓国のドラマのTV放送は、「文化侵略」との苦情と政府の思惑から制限され、みたいやつがネットでみるというような方向になっているようですが・・・。


ちなみに、わたしは韓流とやらがブームになる前から、
韓国映画は何本かみてました。
結構、おもしろいものもありましたよ。
でも、韓国に興味をもって、朝鮮日報など韓国の新聞の日本語版などを読み始めてかえってきらいになりました。
入り口として韓国の戦略は正しいのでしょうが、結局失敗していると思います。
すでに失敗しているものを、日本のテレビ局が自局の利益のためにゴリ押ししていると感じる部分はあります。


追記:
中国語版のウィキペディアにも百度百科にも
「反韓情緒」という項目が建てられています。
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E9%9F%93%E6%83%85%E7%B7%92
http://baike.baidu.com/view/1614084.htm
ドラマとか、入り口としてはよくても、そのあとにくるその実態がだめなんでしょうね。韓国の戦略は。
<コラム>中国内の反韓感情は危険水準(中央日報 2008-08-26)
http://japanese.joins.com/article/883/103883.html
中国人留学生はなぜ反韓感情をもつことになるのか(1)(中央日報 2011-02-06)
http://japanese.joins.com/article/212/137212.html?sectcode=&servcode=


BBCの「世界に良い影響を与えている」かの調査でも
中国で韓国に対して(2010年→2011年)
肯定的:57%→36%
否定的:20%→50%
(韓国が調査対象に入ったのは2010年からです)