言語学の「発生源」

教科書(ただし現在は修正本がでているので改訂されているかも→追記:改訂されていました。)には

中国、インド、ギリシャローマは悠久の歴史・文化伝統をもち、言語学の三大発源地である

中国が、言語学発生の源であると起源を主張していますが、
なんか違和感あります。
中国では文法学などはあまり盛んではなく言語研究の中心は訓詁学(語の意味を研究する分野)だとおもってきたのですが、違うのかな?まあ、言語学の一分野ではあるんですけど・・・。

语言学的历史非常古老。人类最早的语言研究是从解释古代文献开始的,是为了研究哲学、历史和文学而研究语言的。中国在汉朝时产生了训诂学。在印度和希腊,公元前4世纪到3世纪,就建立了语法学。
现代的语言学建立于18世纪初期,是随着历史比较语言学的出现的。

この中国語版のウィキペディアのように、中国で発生したのは訓詁学であること、そして現代言語学について触れているならまだましだと思いますが、
それでも「言語学」なんていうもの・名称が昔からあったという誤解を受けやすいとおもいます。

文法研究は19世紀末の『馬氏文通』が中国文法学の始まりじゃないでしょうか。
牛島徳次氏は「芽生え」は「遠く漢代にさかのぼる」と書いていますが)

すくなくとも、教科書は、起源のみにふれ、近代言語学の有名人、たとえばソシュール、に触れていないので、かなり意図的に中国文化の「悠久さ」と「優秀性」を強調しているように思うのですが、穿ち過ぎでしょうか?
言語の「恣意性」の説明でもなぜか「荀子」がでてきますし・・・。

何よりも、世界の言語学が中国の言語学を源としているのではなく、ヨーロッパ起源の言語学を基礎としている、という点に注意すべきでしょう。

追記:2010年に修訂版がでています。
もともとの筆者とは別の人が改訂しています。アマゾン中国のレビューに「旧版にあった無駄話がなくなってよくなっている」とありましたが、本当によくなっています。無駄な話がへってます。ソシュールも出てきています(三大発生地についてはまだ記載されていますが、まあ許容範囲かなと思います。)
しかし、厦門大学は、どうして旧版なのか?在庫処分なんでしょうかね(もらった時も倉庫で長時間眠っていた古い本の臭いがしたし・・・)。