『中国の歴史』(山本英史)読了

中国の歴史

中国の歴史

山本英史という人の中国史です。
慶應義塾大学教授、専門は明清社会経済史・中国近代史だそうです。
この本は、一般書ですので、細かい数字とか論文の引用とかはないです。


あとがきに著者の考える中国史の大筋が書かれていました。

中国は秦の統一以来、「帝国」という観念によって中国が一極に集中支配されていると考える国家の幻想と多極に分権支配されている社会の現実との狭間で一つの権力が全中国を支配する理念をそうでない実態の中に巧みに溶け込ませながら国制としての整合性を維持してきた。十世紀以降の「伝統中国」は「帝国」の伝統を継承するとともに、実態的な支配地域を東アジア周辺にまで拡大し、それぞれの地域と民族に対してもその観念を適用していった。その中で首都となった北京は、そこに存在する一つの権力が全世界を支配するシンボルとしての役割を担った。清朝はその安定と繁栄により名実ともに東アジアの中心としての「中華帝国」になり得た。その意味で十八世紀はいわば「伝統中国」が完成した時代であった。翻って十九世紀後半以降はその「伝統中国」的なあり方を維持することができなくなり、新しい枠組みを求めて混迷と模索を続ける時代であった。中華人民共和国の誕生は一つの結論であった。だが「人民中国」というそれまでとは全く異なる枠組みによって中国を再統一した新国家が、清朝の領土と多民族で構成される人民を引き継ぎ、北京を都に定めてたどった以後の歩みを振り返れば、中華人民共和国もまた「伝統中国」の影を色濃く引きずってきたことに気づく。


「清朝にとって外国の使節とはすべからく朝貢使節のことであり、一つとして例外はなかった」
「すべて」の意味で「すべからく」をつかってるんでしょうか?
「須らく〜すべし」って漢文表現ですよね。漢文読む機会の多い、中国史研究者が・・・。

あと、2010年と比較的新しい本なので曹操の墓の発見などもふれられていますが、その後偽物疑惑がでてますからね・・・。ちょっと記載するには早すぎたかも。